ARTICLE


JOURNAL#006
不協和音と同調性

2021.07.16

今はまだファッションを語らず

格好いいファッションのことは デザイナーやコーディネーターの先生方にお任せして

ここでは、横道に逸れたりしながら、自由気ままにコラムのようなものを展開して行きます。

Tシャツにまつわるエピソード  その1・・・・・失礼のない服装

総務部から「出勤時の服装について」と書かれた 回覧が届いた。

「Tシャツ禁止、Gパン・短パン禁止、女性のミニスカート禁止」

「取引先に失礼のない服装を心掛けること」

僕の出勤時の服装は おおよそ総務部の思惑には反するものだった。

時によっては スーツを着て、ネクタイを締めて出勤することはあったが、

もっぱら Tシャツ・Gパン だった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

2004年  3年半の中国勤務を終えて配属された部署は 

帰国のタイミングに合わせて新設された メンズ・カジュアル・チーム だった。

テーラードスーツを中心に手掛けてきた会社にとって 

メンズカジュアルは 初めての試みで、製品を造る工場も取引先も 

一から開拓しなければいけなかった。

取引先とアポイントを取り、素材や製品の提案をするのだけれど、

商談相手の格好は とてもラフな服装で、時には Tシャツ、短パン、サンダル姿で商談室に現れた。

取引先に失礼のない服装を心がけること・・・・・

想像してみてほしい。

Tシャツ、短パン、サンダルの取引先担当とビジネス・スーツにネクタイを締めたメーカー担当。

その二人がテーブルを挟んで向かい合っているシーンを。

実に滑稽で、商談がまとまるとは 想像しがたい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

本来なら 総務部からの「Tシャツ・Gパン・短パン禁止令」を

チームのメンバーに説明するのが 僕の役割なのだけれど

僕はその回覧を シュレッダーにかけて 闇に葬った。

回覧とは確認済みの捺印がされて 発信者の元に戻るもの、それが戻らない。

なぜだか、犯人が バレてしまった。

総務部長が言った。 「君は社会人として恥ずかしくないのかね?」

「Tシャツ禁止令」をシュレッダーにかけたことに 憤慨しているのだ。

まるで 新入社員が 総務部長に叱られているかのような場面だが 二人は同年代だ。

服装も髪型も会話する内容も どこからどう見ても 同じ年齢とは思えない二人。

何の共通点も見当たらず、理解しあえることは絶対にないと 確信してしまうほどだ。

総務部長は Tシャツを着ることがあるんだろうか? Gパンは穿くだろうか? 短パンは?

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

Tシャツは ミリタリーの アンダーウェアとして生まれた。

ジェーム・スディーンの映画「理由なき反抗」で

下着としてではなく ファッションとして広まった。

70年代には ロックミュージシャンのメッセージや、ヒッピーが「Love & Peace」を

唱えるための絶好のアイテムとなった。

M.I.D.A.のTシャツには社会的メッセージはない。

ただ 良質で快適な着心地を提供したいという考えのもとに作られた。

一度 袖を通して 実感してほしい。