「今はまだファッションを語らず」

格好いいファッションのことはデザイナーやコーディネーターの先生方にお任せして

ここでは横道に逸れたりしながら、自由気ままにコラムのようなものを展開して行きます。

激しく心を揺さぶる声・・・・・・John Lennon

初めてその感情を覚えたのは確か 10歳、小学校 4年生の頃だった。

家にはオーディオがあって、(当時はステレオと呼んでいたが)

両親は共稼ぎだったので、僕はよく一人で父親の「クラッシック大全集」とか

ザ・ドリフターズの「ズンドコ節」なんかを、誰かが帰宅するまで聴いたものだった。

僕はその日、 John Lennon に出会った。

その日も一人で「クラッシック大全集」をターンテーブルに乗せたのだけど、

ふと、兄が友人から借りてきたというレコードを聴いてみることにした。

その 45回転 EPレコードジャケットは長髪に銀縁の眼鏡をかけた男がマイクに向かって歌っていた。

そしてカタカナで大きく「マザー」と書かれていた。

僕はその日、John Lennon に出会った。

僕の鼻の奥が 「ズン」と音をたてた。

その曲は 「ゴ~ン ゴ~ン」とオカルト映画の効果音の様な

暗く重たい  絶望的な鐘の音から始まった。

スローテンポのスタンダードな曲調で、このあと どんな展開になるのだろうと

注意深く聴いていた時、突然スピーカーの向こうの男が叫んだ。

何度もその男は叫んだ。

繰り返し、繰り返し叫んだ。

僕の鼻の奥が 「ズン」と音をたてた

John Lennon は 1940年 イギリスの港町 リバプールで生まれた。

生まれて間もなく、父親は蒸発して行方不明。

母親は愛人と同棲を始め、Lennon は叔母に預けられた。

両親に見捨てられてしまったのだ。

心に深い傷を負ったまま 思春期を迎えた Lennon を唯一 夢中にさせたもの・・・・

それは  チャック・ベリー や エルビス・プレスリー だった。

ロックは若者のために生まれたのだ。

チャック・ベリー や プレスリー が偉大なところは

ブルース や ジャズ、クラッシック などの音楽が大人のために存在していた時代に

音楽を若者のための物に変えた事だと僕は思う。

ロックは若者のために生まれたのだ。

Lennon は彼らのシャウト 「ワァーッ!」や 「キャーッ!」ばかりを真似た。

叫び散らすことで、心の傷が癒されるとでも思ったのだろうか?

のちに受けることになった 精神治療は 心の傷をさらけ出し、叫び散らすことで

トラウマ を解決していくというものだった。

その治療の結果、書き上げた曲が 「Mother」だった。

1970年 ビートルズ解散後、初アルバム の オープニングナンバー だ。

しかし皮肉にも アメリカ では「狂気じみている」と言われ、放送禁止となってしまった。

その声が完全に消えてなくなるまで僕は聴いた。

「Mama don't go  」と叫ぶ声が聴きたくて

何度も レコード に針を置いた。

「 Daddy come home」と Lennon は何度も叫んだ。

徐々に フェードアウト していく リフレイン を ヘッドフォンを両手で押さえ

フルボリューム になるまで ダイヤル を右に回しながら

その声が完全に消えてなくなるまで僕は聴いた。

そこには確実に 悲しみや 怒りや 恨みの叫びがあった。

10年後 1980年 12月  Lennon は熱狂的ファン に撃たれ、この世を去ってしまった。

Lennon は最後に何かを言いたかっただろうか?

それは「Imagine」の中にあるのだろうか?

それは「Starting over」の中にあるのだろうか?

1972年 生前最後のコンサートとなった「Live in New York City」。

そこには ミリタリーシャツ(多分 og107)を着て「Mother」を歌うLennonがいた。

M.I.D.A. のコレクション、ミリタリーシャツを

僕は「Lennon」と呼んでいる。

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僕の母親は洋裁の仕事をしていた。

渋谷にあった あるレディースアパレルと個人契約を結んで、自宅でサンプルを縫製していた。

ある日、奇妙なドレスを作っていたので聞いてみた。

「そのドレスなに?」

素晴らしい答えが返ってきた。

「オノ・ヨーコ が着るらしいよ」

僕の鼻の奥が「ズン」と音をたてた。

Lennon に少しだけ近づいたような気がした。

彼はとっくに死んでしまっていたのだけれど・・・・・・

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